YIA受賞者・報告記

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2017年度 (第27回日本心血管画像動態学会) 受賞者

氏名
髙岡 浩之
所属
千葉大学医学部附属病院 循環器内科
発表学会名
European Society of Cardiology Congress 2017
会期
2017年8月25日〜30日
演題名
Improved diagnosis of detection of late enhancement in left ventricular myocardium using 2nd generation 320-slice ct reconstructed with first in patients suspected of having myocardial diseases
発表形式
ポスター

学会参加報告記

2017年8月25日から30日までスペインのバルセロナで開催されたEuropean Society of Cardiology (ESC)Congress 2017に参加させて頂きました。ESC Congressは世界各国から約30000人の参加者が集まる世界最大級の循環器学会で、昨年から心臓CTでご高名なErlangen大学のStephan Achenbach先生が本会のプログラム委員長を務められています。ご存知のように開催1週間前には同市内でテロ事件が発生し、本会開催期間中と重なった翌週末には市街地カタルーニャ広場にて追悼集会が開かれるなど、一部にはその余波が残っていました。しかし4年前にも同市で開催されたESC Congressに参加した際と同様に、街の中心部は夜中まで大勢の人がごった返しており、グエル公園のような著名観光スポットはあい変わらずの賑わいを見せていました。
初日に新しい逐次近似画像再構成法のForward projected model-based Iterative Reconstruction SoluTion(FIRST)によるCT心筋遅延造影診断能改善の演題を報告させて頂きました。同じセッションでは筑波大学からの急性心筋梗塞症におけるCT遅延造影評価や、愛媛大学からの心筋灌流CTの演題を拝聴することができ、心臓CTにおける心筋評価の今後の展望について貴重な情報交換ができました。また、会場の他の先生方からも積極的にご質問を頂き、心臓CTによる心筋評価に対する関心の高さを感じました。
また、Imaging部門の初日の口演会場では、経カテーテル的大動脈弁置換術(TAVI)前の心臓CT画像をもとに置換術の際に弁輪部にかかる接着圧を推測することによる術後の伝導障害出現の予測や、心房細動症例における左心耳の解剖評価をもとにした仮想左心耳血流速解析による左心耳血栓予測など、現在の画像診断の役割を超越したコンピュータ科学との融合による臨床シミュレーションの演題が複数紹介されていました。
3日目には3次元CT心筋ストレイン解析による左室線維化予測に関する演題を報告させて頂きました。本研究ではザイオソフト社が新たに開発している新しい解析ソフト“PhyZiodynamics”を用いて、既存の心臓CT画像から3次元方向の左室心筋ストレイン解析を行い、特に肥大型心筋症における左室線維化領域ではこの3次元ストレインが低下する傾向を認め(肥大領域では低下せず)、これを報告しました。今回の発表はJournal of Nuclear Cardiology 誌の“Multimodality imaging: Bird’s eye view from The European Society of Cardiology Congress 2017“にて本会プログラム委員長のAchenbach先生のグループの論文にご紹介頂きました(Bax JJ, et al. J Nucl Cardiol. 2017 Oct 26.)。同セッションでは前述のAchenbach先生のグループもTAVI症例の術前後にCTによる左室心筋ストレイン解析を行い、術後に左室グローバルストレインの改善が確認できたとしており、今後はCTによる心筋ストレイン解析の臨床応用に期待が持たれます。
また、同日のLate-breaking trial セッションでは、CATCH-2試験結果が報告されました。同検討では約600例の症候性症例をランダマイズした2群のうち一方のみで、CTで冠動脈狭窄スクリーニングが困難だった症例に心筋灌流CTを加えることで臨床的有用性があるかを検証しています。この結果、心筋灌流CT群では侵襲的冠動脈造影と血行再建が有意に少なく、中央値17カ月追跡した症例予後では両群に有意差はありませんでした。今後の心筋灌流CTの普及により、患者負担軽減や医療経済上のメリットが期待されます。
本学会では上記の通り心臓CTによる心筋評価の演題を2演題発表させて頂きました。日常臨床における心臓CTでは冠動脈の解剖学的狭窄度評価が目立っていますが、今後は心筋灌流や遅延造影、心筋ストレイン評価等、心筋評価の実臨床応用が進む可能性を十二分に感じられました。最後になりますが本学会に参加するにあたって助成を頂きました日本心血管画像動態学会の関係者の皆様方に、この場をお借りして心より感謝申し上げます。また本会直前に発生したテロ事件の犠牲者の方々のご冥福を祈りすると同時に、被害にあわれた方々に心よりお見舞いを申し上げます。

  • 学会場前にて
  • ポスター発表